コラム/レビュー

やはりアメリカは強かった…延長の末敗退。なでしこジャパンのパリ五輪はベスト8で幕を閉じた

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やはりアメリカは強かった…
日本時間8月3日(土)、パリオリンピック準々決勝がパリのパルク・デ・プランスで行われた。日本はC組2位で進出し、相手はB組1位のアメリカ。過去の対戦成績は1勝8分31敗と大きく負け越している。90分間戦うも互いにゴールできず延長戦へ。均衡を破ったのはアメリカ。延長前半17分、FW5ロドマンがゴールを決め、日本は0-1で敗北。ベスト4進出はならず、2大会連続でベスト8で終えた。

(写真引用元:JFA公式サイト

アメリカ代表に何もさせなかった前半

池田太監督率いるなでしこジャパンは、3バックを基調に必要に応じて5バックへシフトし、堅固な守備を構築する戦術を採用。前半からアメリカ代表が圧倒的なボール支配率を誇る中、日本はしたたかにカウンターを狙う。しかし、思うように前線でボールをキープできず、アメリカ代表のパス回しとサイド攻撃が続く。

会場は「U-S-A」という選手に力を与えるチャントが響き渡り、アメリカ代表の優勢が色濃く感じられる。それでも、なでしこジャパンの守備が崩れることはなかった。特に印象的だったのは、DF3南萌華の前に出る積極的な守備がアメリカ代表に攻撃リズムを作らせなかったことだ。その中心にいるのが、2008年から代表経験を持つキャプテンDF4熊谷紗希。彼女を中心に統率の取れた守備が光る。

MF8清家が単独で突破を試みる場面もあったが、アメリカの堅い守備に阻まれ得点には至らない。前半30分、アメリカのFW11スミスがペナルティエリアに侵入しシュートを放つも、DF4熊谷が冷静にブロック。34分、日本にも待望のチャンスが訪れる。DF13北川からMF8清家へパスがつながり、FW11田中が相手を背負いながらターンし強烈なシュート。しかし、惜しくもGK1ネアー正面に…。

直後、再びMF8清家が攻撃を組み立てる。MF15藤野へのパスは、FW7ダンに阻まれたが、こぼれ球に素早く反応したDF20守屋のボレーはゴール上に外れた。前半の日本はアメリカに決定機を許さず、互角以上のインテンシティで戦った。

ハーフコートゲーム、体力消耗と苦しい後半

全体的にアメリカが主導権を握る展開は変わらないが、開始直後は日本がアメリカゴールを脅かした。後半5分、日本はショートカウンターからDF20守屋が右サイドを駆け上がりクロスを上げるが、ここは合わず。アメリカは前半同様、ボールを支配するが、高い集中力を保つ日本から決定機を作れず。逆に日本は隙を狙ってカウンターからチャンスを作る。MF15藤野がスピードで右サイドを抜け出す場面では、DF14ソネットがファウル覚悟で止め、イエローカードを受ける。

後半15分、アメリカは日本DFの背後にボールを送り、FW11スミスがゴールを狙うが、最年少のDF6古賀が阻止。さらにショートコーナーからFW9スワンソンがシュートを打つもゴールの枠を外れる。徐々にアメリカがハーフコートゲームを展開し、日本は我慢の時間が続く。アメリカはラベルを左サイドに張らせ、日本のブロック崩しを狙う。

日本は後半25分にFW11田中に代えてFW9植野を投入。直後、MF14長谷川がクロスを送るもFW9植野とは合わず。観客からはアメリカの単調なポゼッションに対してブーイングが起こる。さらに流れを変えたい日本は、後半35分、MF15藤野に代わってMF7宮澤をピッチに送った。アメリカは4トップに近い形で日本ゴールを狩りにきている。

後半45分、アメリカが右サイドでFKを得るが、日本DFがクリア。そのこぼれ球にFW5ロドマンが反応し、強烈なシュートを放つもDF13北川が体を投げ出しブロック。アディショナルタイムでは、FW5ロドマンが倒れ、一瞬PKと思われる場面もあったが、両チーム無得点のまま延長戦へ突入。

延長アディショナルタイムの悲劇

延長に入り、日本はフィジカルの強いDF5高橋をDF6古賀に代えて投入した。アメリカもFW9スワンソンからFW8ウィリアムズに交代する。

後半開始直後、DF13北川がドリブルで仕掛けるも、疲労なのか痛みなのか思うように足が運べず逆にDF2フォックスに対してファウルを犯してしまう。右ひざを押さえ、一瞬立てなくなりヒヤリとしたが走ってポジションに戻る。会場には相変わらず「U-S-A」のチャントが響き渡る。

延長前半6分、アメリカの隙を突いたMF7宮澤がPA内でパスカットし、そのまま強引にシュートを打つが右外サイドネットでゴールならず。直後、今度はアメリカのFW11スミスが日本の最終ラインからボールを奪い、GK1山下と1対1になるも、体を張って日本ゴールを死守する。

延長前半8分には、アメリカのMF3アルバートが痙攣で倒れ込み一時的にピッチを離れる場面もも訪れた。FW5ロドマンはペナルティエリア内でボールを受け、左足でシュートを放つが枠を大きく外れる。90分以上戦っている選手たちに疲労が目立ち始める。

そして延長前半アディショナルタイム。ついにアメリカが先制。FW5ロドマンがロングボールを見事にコントロールし、DF13北川をかわして左足でシュート。GK1山下は指先で触れたものの、FW5ロドマンの気迫が乗り移ったボールは無情にもゴール左隅へ吸い込まれた。

無情に鳴り響くホイッスル

延長後半、日本はDF13北川に代えてFW19千葉、MF14長谷川に代えてMF16林を投入。アメリカもMF16ラベルからDF13ナイスウォンガーへと交代する。

後半2分、MF7宮澤のクロスに反応したMF16林がこぼれ球を拾うも、シュートには至らない。直後、FW5ロドマンが再び抜け出しシュートを放つが、GK1山下が右足一本で日本のゴールを守った。

DF5高橋はなを前線に置き、パワープレーに転じるものの、結果に結びつかない。

試合終了が近づく中、無理に攻めないアメリカに対して観客からブーイングが起こる。そして、試合終了の笛が響いた。この瞬間、なでしこジャパンのパリ五輪は幕を閉じた。120分間攻守わたり予想以上の戦いをするも、アメリカのゴールネットを揺らすこと一度もなかった。

試合後「あの失点だけだったな、っていう印象なので、すごく悔しです」とMF14長谷川はアメリカの一発に悔しさを隠せない。

キャプテンDF4熊谷は「悔しさはもちろんありますけど、やっぱ最後に勝ってくるアメリカって強いなって」2011年の勝利から勝てないアメリカの強さを認めている。

それでも、世界一のアメリカ相手に互角に戦い抜いたなでしこジャパンの選手たちには、この経験を糧に次へ進んでほしい。

ABOUT ME
眞木 優
ライター(取材・インタビュー・執筆) | サッカー歴30年以上 | 浦和スポーツクラブJrユース出身(現浦和レッズ) | リエゾン草津出身(現ザスパクサツ群馬) | 【実績】大手スポーツメディア掲載・現役プロ選手、元日本代表選手インタビュー | note▶https://note.com/masakiyu_/