コラム/レビュー

【2024年度】全国高校総体王者!昌平高校サッカー部玉田圭司監督が本当に目指すものとは?

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2024年8月3日、福島県のJヴィレッジで全国高等学校総合体育大会(以下:全国高校総体)の決勝戦が行われ、昌平高校(埼玉県)が神村学園(鹿児島県)を3-2で逆転勝利を収めた。見事、初の全国制覇達成を成し遂げたのは記憶に新しい。

今大会の直前、昌平高校にはある大きな変化が訪れた。
過去、彼らが日本一を目指すも届かなかった❝何か❞がそこにはあったかもしれない。チームにとっても選手にとっても、大きな存在となる新監督の就任である。

監督に就任したのは、元サッカー日本代表・FW玉田圭司氏(以下:玉田監督)である。Jリーグで長年活躍した玉田監督が、高校サッカーの指導者として新しい道をスタートさせたのだ。

無冠の昌平高校に就任した玉田監督が目指すものは何なのだろうか。

2024年8月3日、福島県のJヴィレッジで行われた全国高校総体決勝戦。埼玉の昌平高校が神村学園(鹿児島)を3-2で逆転勝利し、ついに初の全国制覇を成し遂げた。この熱戦を制したチームには、ひとつの大きな転機があった。

それは、大会直前に行われた監督交代だ。新たにチームの指揮を執ったのは、元サッカー日本代表の玉田圭司。プロサッカー界で数々の伝説を残した彼が、高校サッカーの現場に降り立ったことで、昌平高校にはこれまでにない新しい風が吹いた。

何度も頂点を目指しながらも届かなかった昌平高校。彼らがついに手にしたものは、玉田監督のもたらした「勝利の方程式」だったのかもしれない。彼がこのチームに込めた想いを探る。

強豪校へと成長するも無冠

引用元:昌平高校公式HP

昌平高校は、2014年度第93回全国高校サッカー選手権大会で初の全国出場を果たす。このときは初戦敗退に終わってしまった。

その後、選手権大会では19、20年度のベスト8、全国高校総体では16、18、22年度にベスト4の成績を収めている。

全国の強豪校として成長してきているが、まだ達成できていなかったのが全国制覇だった。初の全国出場を果たしてから10年間、昌平高校はまだ一度も日本一の座に立てていなかったのだ。

2024年度新体制へ。元日本代表FW玉田圭司が監督就任

2024年度昌平高校サッカー部に就任した元日本代表FW玉田監督
引用元:FC LAVIDA公式SNS

昌平高校は2024年度から、元サッカー日本代表FW玉田監督が、前藤島監督に代わって就任した。

2023年度には、すでに同校スペシャルコーチとして就任している。玉田監督は「その話があったときはめちゃくちゃ嬉しかったです」と、監督就任への気持ちを素直に語った。

玉田監督と聞いて思い出すのは、06年ドイツW杯ではないだろうか。日本代表がノックダウンステージに進むためには、グループステージ最終戦のブラジル相手に2点差以上で勝たなければならない。厳しい状況に追い込まれていた。

そんな緊迫した状況の中、前半34分ブラジルのゴールネットが揺れた。日本の背番号20、玉田監督が左45度から振り抜いたシュートは完璧だった。こう言っては失礼かもしれないが、会場にいた人だけでなく、日本で応援していた誰もが驚いたに違いない。

まさに❝青天の霹靂❞である。

玉田監督は、習志野高校卒業後、柏レイソルや名古屋グランパス、セレッソ大阪、V・ファーレン長崎などJクラブの4チームで大活躍した選手である。常にゴールを狙うFWとして、J1通算99得点、J2通算34得点という記録を持っている。

サッカー王国ブラジルからゴールした男。監督でも「何かやってくれるだろう」という期待はあった。しかし、こんなに早く記録を残したのはある意味裏切りだった。

就任1年未満で過去最高成績である高校総体ベスト4を超えたのである。初戦から苦しい戦いが続いたが、チーム全員で戦い決勝まで勝ち進んだ。決勝の相手は、無失点で勝ち上がってきた鹿児島の強豪神村学園。

昌平高校の超攻撃スタイルが、鉄壁の守備を誇る神村学園にどこまで通用するのか。周囲はワクワクとドキドキが止まらなかっただろう。

昌平高校が長年で築き上げてきたテクニックに加えて、玉田監督が23年間培ったプロ経験を神村学園にぶつけた。一時はリードを許すも見事頂点に立ったのだ。

高校サッカー3大タイトル

2024年度全国高校総体埼玉県大会で優勝して喜ぶ昌平高校サッカー部
引用元:高校サッカードットコム

高校サッカー界には3大タイトルと言われる大会がある。

全国高校総体、冬の選手権大会、そして高円宮杯の3つだ。これらがビッグタイトルとして位置づけられている。

長年の高校サッカーの歴史を振り返って見て、私の知り限り、そして調べた限り、3冠を達成したチームは過去2チームしかない。

  • 1997年度:東福岡高校
  • 2021年度:青森山田高校

1つの大会を優勝することさえ難しいが、1年間チームのコンデイションやモチベーションを維持し続け、3冠を達成することは極めて異次元である。

その3冠を成し遂げるには、一年の最初に訪れる夏の「全国高校総体」を優勝したチームにしか権利が与えられない。

玉田監督率いる昌平高校は、2024年度の3冠を手にする権利を得た。次に目指すタイトルは高円宮杯U-18プレミアリーグ優勝である。

初の全国制覇した経験が、チームや個にどのような影響をもたらすだろうか。彼らの年間リーグの戦いを楽しみにしたい。

結果と同じくらい選手育成を目指す

育成年代とコミュニケーションをとる玉田監督
引用元:サッカーマガジンWeb

玉田監督の就任は、単なる勝利を超えた新たな挑戦の幕開けだった。彼が追い求めるのは、選手たちの将来であり未来を切り拓く成長だ。

「勝利にももちろんこだわりますけれども、プレーの質などに僕はフォーカスしていきたいなというのがあるし、結果が全てではないと思っているんですよ。この先に繋がる何か。もちろん、高校でサッカーを辞める子もいるだろうし、プロを目指す、大学でサッカーをするっていう子もいると思うので、そういった子たちの成長の場であっても欲しいなと思います」と玉田監督は語る。言葉から感じるのは、結果を超えた人間形成への強い信念がうかがえる。

「もちろん、やるからには日本一を目指しますけれども、色々なことにこだわって、お客さんや親御さんが見ていて『サッカー楽しいな』とか『ここに預けて良かったな』と思ってもらえるようなサッカーや人間の成長というものは見せたいですね」。と、玉田監督は選手だけでなく、視野を広くもった指導に力を入れている。

全国制覇は果たした昌平高校は、これから「夏の王者」としての期待とプレッシャーを背負うことになる。プレミアリーグや選手権大会での好成績、プロ選手の輩出といった目に見える結果を求められるのは必然だ。

ライバル校はこれまで以上に昌平高校を分析し「打倒昌平高校」として挑んでくるであろう。玉田監督は、その挑戦をしっかり見据えているに違いない。

しかし、彼の真の価値は、勝利という結果の先にある。

足元のスキルだけでなく、サッカーを通じ人間としてひと周りもふた周りも成長したとき、昌平高校のサッカー部は新たな高みに達する。観客を魅了し、心を揺さぶる「楽しいサッカー」がそこには生まれる。

玉田監督の下、新たな時代を切り開いた昌平高校サッカー部はスタートしたばかりである。埼玉に再びサッカー熱が燃え上がり、1950~70年代の「サッカー王国」としての栄光を取り戻す日は、もう目の前に迫っているのかもしれない。

ABOUT ME
眞木 優
■2021年~SEOライター■2024年~スポーツライター■『人間形成・人物ストーリー』をテーマにnoteも絶賛執筆中■育成年代・なでしこリーグ取材■浦和スポーツクラブ(現・浦和レッズ)出身■2001~2002年リエゾン草津(現・ザスパクサツ群馬)所属■2005年全国クラブ選手権で日本一■『書くxノンフィクション』でイノベーションを生む出す